MYUtakasaki

kk
stereo誌 2023年07月号 今月の変態ソフト選手権!/フランスバロック・ソナタの展翅(てんし)

stereo誌 2023年07月号 今月の変態ソフト選手権!/フランスバロック・ソナタの展翅(てんし)

フランスバロック・ソナタの展翅(てんし)

フランス趣味からイタリア趣味へ至るグラデーション

リコーダー奏者本村睦幸の最新盤は、フランスバロック・ソナタの展翅(てんし)と題した1枚。展翅(てんし)とは、標本などにするため、昆虫などの羽をひろげること。フランス趣味・イタリア趣味の「ソナタ」に、性格的小品もまじえて、美しい1枚の絵のようにプログラムされています。

フィリドールのソナタは、「リコーダー」を楽器指定しているフランスの楽曲。シェドヴィルの作品は、ヴィヴァルディの作品13と偽って出版されたもので、当時のフランスでヴィヴァルディの作品と思われていた曲を元にアレンジした楽章と、シェドヴィル自身による楽章を交えた構成。材料はイタリアですが、フランスのロココ趣味が色濃く反映されたユニークな作品です。マレの作品はもともとはヴァイオリンとヴィオラ・ダ・ガンバとチェンバロのための作品ですが、ヴァイオリンのパートはトラヴェルソでもほぼ演奏可能、そしてここではトラヴェルソと同じ音域のリコーダーを用いて演奏しています。イタリアに生まれフランスに帰化したカナヴァスの作品、さらにクープランの描写的小品をはさんで、最後はオトテールのソナタでディスクが締めくくられます。1枚全体が美しい絵画かタペストリーのよう。どの曲も心地よい素朴さ、典雅な風合いに満ちており、親密なアンサンブルにも非常に好感がもてます。
(キングインターナショナル)

« »