MYUtakasaki

kk
stereo誌 2023年07月号 今月の変態ソフト選手権!/クチュール

stereo誌 2023年07月号 今月の変態ソフト選手権!/クチュール

クチュール
Various Artists

商業的な側面もそのままにノスタルジックな80年代サウンドを現代に移し替えた個性的作品

1979年生まれのリリエンシュテルンは、CM音声や80年代ポップスなど、自分が繰り返しよくきいた音をサンプラー素材として作品を作っています。
それらはいわば高度に商業化された音であり、コラージュ素材として意味ありげな素材に見えますが、なにか別の意味を含ませるとか、主観的な良し悪しをほのめかす、といった感じはまったくなく、気持ち良いくらいにあからさまに引用しています。それによって獲得された独特な雰囲気は実に個性的。

シンセサイザーとオーケストラという編成で書かれた『クチュール Couture』は南西ドイツ放送交響楽団の委嘱作品。機械音と生音、新しさと伝統が対比されるイメージ…かと思いきや、およそまるで違う音楽が展開されます。
使われるシンセサイザーはどれも80年代のもので、名器とされながらもすでに時代遅れとみなされている楽器であり、オーケストラもまた、同じ存在感をもつ「音源」という扱い。
曲調としては80年代シンセ音楽が基礎にあり、その中で両者の音は溶け合うように織り込まれ、どこまでシンセか、どこからオケか、判然としないサウンドでたゆたいます。
これがスコアに実際に書かれ、伝統によって高められた交響楽団が演奏しているというのも不思議な感覚にさせられます。

『頂上 Top』はゲートリバーブのかかったスネアに始まります。80年代のヒット曲が使われ、終盤にヴァン・ヘイレンの「ジャンプ」が登場。(キングインターナショナル)

« »