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新譜月評 優秀録音

『レコード芸術』2023年07月号 新譜月評 優秀録音/ストラヴィンスキー: 結婚 (1919年オリジナル版)

ストラヴィンスキー: 結婚 (1919年オリジナル版)

レ・シエクルの手兵的合唱団アンサンブル・エデス、凄すぎる声の力による「結婚」と「ボレロ」

ストラヴィンスキーのバレエ・カンタータ「結婚」は合唱、4台のピアノと打楽器が織りなす強烈な音響で知られますが、その形態に落着くまで紆余曲折がありました。まず1917年に管弦楽用に執りかかるものの中断、1919年には合唱とピアノラ(自動ピアノ)、ハルモニウム、2台のツィンバロン、打楽器用に着手しますが、生演奏と機械(ピアノラ)の共演やツィンバロンの名手を2人揃える非現実性に気づき前半で中止、最終的に現行版となりました。
2007年にオランダの作曲家テオ・フェルベイが1919年版を意図通りに完成させる許可をストラヴィンスキーの遺族から得て、全曲が日の目をみました。ハルモニア・ムンディからルネ・ボスが2005年に完成させた版もリリースされていましたが、当アルバムはピリオド楽器のレ・シエクルのメンバーと、その手兵的合唱団アンサンブル・エデスの演奏であることが特別。声楽も正式なロシアの方言指導を受け、農民調に歌っているのが注目です。また、ピアノラ(自動ピアノ)は最新コンピューター制御を駆使。プログラミングをさきの補筆完成したルネ・ボスが務めているのも、作品を熟知する点で重要です。
アンサンブル・エデスのノン・ヴォブラート唱法はリアルで終始ボルテージが高く、ツィンバロンの効果も抜群。ロシアの民謡唱法も巧みに真似し、あたかも前衛演劇を見るような、3大バレエに劣らぬエネルギーの発散と衝撃に満ちています。
もうひとつ興味深いのは同じ編成に編曲されたラヴェルの「ボレロ」。リズムは打楽器が担当し、ヴォカリーズによる各歌手とハルモニウムがメロディを受け継ぎますが、音楽自体は原曲に忠実。こちらもノン・ヴォブラート歌唱が高貴さから最後の狂気じみた物凄い盛りあがりまで、声の力を堪能させてくれます。ロト指揮の「ボレロ」はまだディスクがありませんが、レ・シエクルのメンバーのリズム感と引き締まった演奏から想像が広がります。(キングインターナショナル)

『レコード芸術』2023年07月号 新譜月評 優秀録音/ラヴェル: ボレロ

ラヴェル: ボレロ
こんな「ボレロ」聴いたことがない!
ロトとレ・シエクル、予想を上回る衝撃の凄さ。今年最大の新譜登場!!ついにロト&レ・シエクルの「ボレロ」が実現しました!過去4枚のラヴェル・アルバムの素晴らしさから、「ボレロ」がどんなものになるか誰もが期待し、実際リクエストも多数寄せられていました。ロト自身「楽器が揃ったら必ずやる」と言っていましたが、今回満を持しての録音となりました。これが予想をはるかに上回る演奏で、冒頭から15分間釘付けとなります。

リズムを打ち続けるのがスネアドラムではなくタンブール(プロヴァンス太鼓)であることと、ピリオド楽器の音色とノンヴィブラート奏法に一瞬ドキリとさせられますが、すぐ既成概念を一新され引き込まれます。変わっていく楽器の音色が知っているものと違うのが新鮮で、ハルモニア・ムンディの録音の良さがそれぞれのニュアンスを絶妙に伝えます。

ロトは厳格にテンポを守り、じわじわとクレッシェンドしていくものの単調ではなく、むしろリズム感の良さが際立ちます。それでいて各奏者のソロには遊び心をまかせている点が民主的であると実感させられます。ラヴェル究極の職人芸による人工美の音楽ながら、官能的とさえいえる情感を示します。

ほとんどがボレロ初演時代の楽器で、トランペットのように聴こえる小口径のトロンボーンは初演時に使われたそのものとのこと。ガット弦のエラール・ハープ、ミュステルのチェレスタまで独特な明るい音色に魅せられます。楽譜も新しいクリティカル版により、後に削除されたカスタネットが曲後半に現れます。あまりの鮮烈さにあまたある名盤がかすんでしまう印象を持つと申せましょう。

アルバムのメインは歌劇「スペインの時」。ロトとレ・シエクルにとりオペラや管弦楽のジャンルの違いは重要ではなく、両作品にみられるラヴェルのスペインの出自と愛着、非現実性を追求しています。「スペインの時」は約50分の一幕物で、スペイン女性の浮気心をテーマにした笑劇。通常コントラファゴットで代用されるサリュソフォンのパートをオリジナル通りに奏して独特な効果をあげています。歌手陣も好演で、ハバネラのリズムによる大団円の五重唱は圧巻です。(キングインターナショナル)

『レコード芸術』2023年07月号 新譜月評 優秀録音/ロマンス~ロベルト&クララ・シューマン、ファニー&フェリックス・メンデルスゾーン作品集

ロマンス~ロベルト&クララ・シューマン、ファニー&フェリックス・メンデルスゾーン作品集

エマニュエル・パユによる、シューマン夫妻、メンデルスゾーン姉弟による魅力的な曲で構成された作品集

ベルリン・フィル首席であり、名実ともに現代フルート界のトップに君臨するエマニュエル・パユが、新しいソロ・アルバムに選んだ作品は、シューマン夫妻、メンデルスゾーン姉弟による、1840年から1860年の間に書かれた作品をフルートで演奏したもの。その当時フルートは人気にもかかわらず、フルート用に書かれた室内楽はあまりありませんでした。このアルバムには、ロベルト・シューマンの「3つのロマンス Op. 94」は、もともとはオーボエのために書かれたもので、1950年にジャン=ピエール・ランパルによって編曲され、その後、フルート奏者にとって重要なレパートリーのひとつになりました。こうした歌曲や他の楽器のための作品を、パユの甘美で印象的な音色には、ロマティックさとともに弱音から奏でられる淡い独自の絶品な表現力があります。「私はモザイク画を大きくするよりも、緻密さを追求したい」と語っているとおり、パユが描いた音楽そのものがこのアルバムに散りばめられています。

ワーナーミュージック・ジャパン取り扱い輸入盤のみ、日本語解説書・帯付き
日本語解説書には、ランパル協会会長のドゥニ・ヴェルーストによる作品解説の日本語訳、木幡一誠氏による書き下ろし解説を掲載(ワーナーミュージック・ジャパン)

『レコード芸術』2023年07月号 新譜月評 優秀録音/バツェヴィチ: 協奏曲集

バツェヴィチ: 協奏曲集

再評価著しいバツェヴィチの協奏的作品を集めた貴重なアルバム。ニコラス・コロン指揮フィンランド放送響、ピアノにペーテル・ヤブロンスキーと、演奏家にも注目!

演奏家として、作曲家として、20世紀ポーランド楽壇を席巻したグラジナ・バツェヴィチ。彼女自身が極めて優れたヴァイオリニストであったことからヴァイオリン奏者は早くから彼女の作品に注目して来ましたが、近年はクリスティアン・ツィメルマンらが演奏するようになってピアノ作品も広く注目されています。当CDはポーランドの独立回復100周年(2018年)を記念する国際文化プログラムの一環として、アダム・ミツキエヴィチ協会と共同で制作されたもので、バツェヴィチの協奏的作品を3曲収録。いずれも録音が極めて少ないものばかりで貴重です。
バツェヴィチは次のような言葉を残しています。「私は[ポーランドの同世代の作曲家からは]孤立しています。なぜなら私は作品における形式を重視しているからです。もし物を乱雑に置いたり、物が積み重なっているところに石を投げたりすれば、崩れるに決まっています。同様に、音楽においても構造的な法則が必要で、自立できるようにしなければならないのです。もちろんその法則は古いものである必要は決してありません」
その言葉通り、2曲の協奏曲と「弦楽、トランペットと打楽器のための音楽」はいずれも伝統的な急-緩-急の3楽章形式をとっていますが、その語法は桁外れの情熱家だったと伝えられるバツェヴィチらしく、両端楽章はエネルギッシュでヴィルトゥオーゾ的、中間楽章は沈思や深い祈りや畏怖の念を感じさせて、コントラストが鮮やかです。技術的要求は高度ですが、当盤ではソリストもオーケストラも万全の対応を見せています。冒頭に序曲を置いて一晩のコンサートのように仕上げています。
※国内仕様盤には原盤解説の日本語訳が付属します。(ナクソス・ジャパン)

『レコード芸術』2023年07月号 新譜月評 優秀録音/マーラー: 交響曲第9番

マーラー: 交響曲第9番(SACDハイブリッド)
細部に至るまで耽美的な演奏!
ヴァンスカ&ミネソタ管によるマーラーの傑作交響曲第9番!SACDハイブリッド盤。好評を博しているオスモ・ヴァンスカ率いるミネソタ管弦楽団によるマーラー・シリーズ。当アルバムは交響曲第9番を収録!
当演奏でもヴァンスカならではの緻密な構成と、細部にまで注意が払われた圧巻の仕上がり。繊細かつ丁寧な音楽づくりが魅力です。
また録音にも注目。オーケストラ全体の響きを自然にとらえ、演奏の一体感を堪能することのできる録音です。

アルバン・ベルクが「マーラーが書いた中で最も輝かし作品」と激賞した交響曲第9番。
形式、主題、調性あらゆる面で広大で感情的な第1楽章、喜びと遊び心に満ちた第2楽章、辛辣な皮肉と怒りを表した第3楽章、そして神秘的なアダージョで締めくくる第4楽章で構成されたマーラー最大の傑作です。

BISレーベルで数多くの録音を残してきたヴァンスカが最上級の演奏に達したマーラーの交響曲シリーズ。これまでに第1 番「巨人」(KKC 6034 /BIS SA 2346)、第2番「復活」(KKC 5995 / BIS SA 2296)、第4 番(KKC 6131 / BIS SA 2356)、第5番(KKC 5831 / BIS SA 2226)、第6番(KKC 5994 / BIS SA 2266)、第7 番(KKC 6184 / BIS SA 2386)、第10 番(KKC 6321 / BIS SA 2396) がリリースされております。

2003年にミネソタ管弦楽団の音楽監督に就任したヴァンスカは、ベートーヴェンの交響曲全集などで評価を高めました。しかし、当団では経営悪化に伴う労使対立が激しさを増し、2012年10月に経営側はロックアウトを決行。
その後の2012/13年のシーズンは全てキャンセルとなり、当団の存続そのものも危ぶまれる状況となりました。ヴァンスカは、労使の合意が成立した2014年1月に首席指揮者に復帰し、以後、団結力の増したミネソタ管の演奏は一層密度の濃いものとなっております。(キングインターナショナル)

『レコード芸術』2023年06月号 新譜月評 優秀録音/ラフマニノフ: 交響曲第2番

ラフマニノフ: 交響曲第2番
ジョン・ウィルソン&SOL!
ラフマニノフの傑作、交響曲第2番!2022年度レコード・アカデミー賞&英グラモフォン賞受賞のジョン・ウィルソン&シンフォニア・オヴ・ロンドン!
2022年10月リリースの交響曲第3番に続く、ラフマニノフの代表作、交響曲第2番!

BBCミュージック・マガジン賞をはじめとしたこれまでの数々の受賞に続き、2022年度には「ラヴェル:管弦楽作品集」(RCHSA5280/CHSA5280)がレコード・アカデミー賞の管弦楽曲部門、そして英グラモフォン賞の空間オーディオ部門を受賞するなど名実共に世界のトップクラスへと登り詰めつつあるジョン・ウィルソン&シンフォニア・オヴ・ロンドン。
2022年10月リリースの「ラフマニノフ:交響曲第3番」(RCHSA5297/CHSA5297)に続いて、2023年に生誕150周年を迎えたラフマニノフの代表作、交響曲第2番が待望のリリース!

ラフマニノフが「ピアノ協奏曲第2番」の成功によって「交響曲第1番」の初演の失敗から立ち直り、公私共に軌道に乗りつつあった時期に書かれた交響曲第2番は、甘美な旋律やドラマチックな展開で「ピアノ協奏曲第2番」などと並ぶラフマニノフの最高傑作の一つとして広く親しまれています。
人気作品なだけに過去にもアンドレ・プレヴィンをはじめ数々の名指揮者が録音を遺してきましたが、ジョン・ウィルソン&SOLはその演奏内容の充実度も去ることながら、これまでのChandosからの一連のリリースで常に高く評価されてきた音質面でも際立つものがあるといえるでしょう。
カップリングには「鐘」の愛称で親しまれる「前奏曲」の、ストコフスキによる管弦楽編曲版を収録。(東京エムプラス)

『レコード芸術』2023年06月号 新譜月評 優秀録音/20世紀傑作選5バルトーク:管弦楽のための協奏曲 組曲「中国の不思議な役人」

20世紀傑作選5バルトーク:管弦楽のための協奏曲 組曲「中国の不思議な役人」

パーヴォ・ヤルヴィ&N響の総決算―――バルトークの2大名作の決定盤。

一時代を画したパーヴォ・ヤルヴィとNHK交響楽団の掉尾を飾ったバルトーク・アルバムが登場。首席指揮者としての最終シーズンに満を持して取り組んだバルトーク・プロをそっくりライヴ・レコーディングしたもので、2019年に発売した「弦・チェレ」「ディヴェルティメント」「舞踏組曲」から成る「三部作」と対をなすアルバムです。
ヤルヴィにとって初録音となる「中国の不思議な役人」は組曲版を使用し、N響のヴィルトゥオジティの高さとヤルヴィの緊密なドライブが相乗効果を生んだ凄演。「管弦楽のための協奏曲」はヤルヴィにとって16年ぶりの再録音ですが、彼がN響首席指揮者就任時に取り上げ、「コンサートベスト10」に選ばれた人気の演目の再演で、このコンビが積み重ねた音楽活動の成果と重みを明確に反映した充実の演奏です。
N響に伝わるドイツ的なサウンドと高い機能性を融合し発展させたヤルヴィの功績が深く刻まれた新しいバルトークの音世界がここにあります。(ソニー・ミュージック)

『レコード芸術』2023年06月号 新譜月評 優秀録音/至福の憧れ~ゲーテ歌曲の現在

至福の憧れ~ゲーテ歌曲の現在
ドイツが生んだ文豪が生涯書き続けた「詩」と
その世界に心を奪われた作曲家たち詩人や劇作家、小説家だけではなく政治家、自然科学者、画家としても才能を発揮したヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ(1749-1832)。その豊かな人生を映し続けた「詩」は、時代を超えて多くの作曲家を魅了している。長年ゲーテ歌曲に取り組んできたリート・デュオが、今もなお愛される彼の詩と歌曲の因果を紐解き、その真髄に迫る。

『レコード芸術』2023年06月号 新譜月評 優秀録音/ヴィヴァルディと同時代のオペラ・アリア集

ヴィヴァルディと同時代のオペラ・アリア集
【アデル・シャルヴェ、躍進!伸縮自在の古楽アンサンブルと聴かせるヴィヴァルディ時代の息吹】
バロック・オペラが歌劇界を沸かせ、古楽に高い適性を持つ歌手たちが広く活躍するフランス。その最前線で躍進を見せるメゾ・ソプラノのアデル・シャルヴェが、同国の新世代を代表するチェンバロ奏者ジュスタン・テイラーとバロック・ヴァイオリン奏者テオティム・ラングロワ・ド・スヴァルトを中心とする才人集団ル・コンソートと共に、待望のソロ名義によるオペラ・アリア集をALPHAレーベルに録音しました。
「赤毛の司祭」ヴィヴァルディが熾烈な競争社会で人気を博した頃のヴェネツィア歌劇界に光をあて、当時の水の都を席捲した人気劇場の一つサンタンジェロ劇場を沸かせた作品の数々をじっくり聴かせます。近年ヴィヴァルディ研究に大きな貢献を果たしている音楽学者で、自身バロック・ヴァイオリンを弾く古楽舞踏の専門家でもあるオリヴィエ・フレ(ライナーノートも担当)の協力のもと、収録作の大半は今回が世界初録音!
ヴィヴァルディはもちろんのこと、後年ドイツやスウェーデンでも重用されたケッレーリ、バッハも憧れたドレスデン宮廷楽団での活躍も知られるリスト―リら、ヴィヴァルディ作品に全く遜色のない音楽を書く作曲家たちがヴェネツィアにひしめいていたことが強く実感できる選曲に驚かされます。いかなる秘曲もこれほど瑞々しく味わえるのは、リート歌手として先に注目を集めたシャルヴェならではの緻密で繊細な表現力もさることながら、柔軟に各作品の機微に触れてゆくル・コンソートの精妙な解釈あればこそ。大型リュートの一種テオルボをチェロと同数(3挺)起用し、数人だけの室内楽的な語らいから精悍なオーケストラ・サウンドまで伸縮自在の編成が、来るべきロココへの一歩を予感させるバロック後期の音楽世界の魅力を余すところなく伝えてやみません。(ナクソス・ジャパン)

『レコード芸術』2023年06月号 新譜月評 優秀録音/東亮汰 IN CONCERT Recorded at Takasaki City Theatre 2022

東亮汰 IN CONCERT Recorded at Takasaki City Theatre 2022 [SACD Hybrid+DVD]<初回限定盤>
リサイタル・録音・映像によって才能溢れる若手演奏家を多角的に紹介する、大友直人が贈る高崎芸術劇場の「T-Shotシリーズ」第九弾。東亮汰は最も若い世代を代表するヴァイオリン界の逸材。ソリストとしてだけでなく室内楽・オーケストラにも活動の場を広げている。高度なテクニックと繊細かつ豊かな音色と鮮やかな音楽作りが魅力的な東亮汰の初ソロCD+DVD。[発売元・(公財)高崎財団](オクタヴィア・レコード)