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『レコード芸術』2022年11月号 新譜月評 優秀録音/Manu Scriptum 手書き – ホルンとピアノのための作品集

『レコード芸術』2022年11月号 新譜月評 優秀録音/Manu Scriptum 手書き – ホルンとピアノのための作品集

Manu Scriptum 手書き – ホルンとピアノのための作品集
シューマンの言葉「始めに湧いた想いは、えてして最高で一番自然なものだ」をきっかけに、スペインのホルン奏者アドリアン・ディアス・マルティネスが作品の「生まれたての姿」に迫ろうとしたアルバム。タイトルの「Manu Scriptum」は、ラテン語で「手書き」を意味します。
マルティネスは、デュッセルドルフとツヴィッカウのシューマン研究所の協力で「アダージョとアレグロ」の自筆譜(タイトルは「ロマンスとアレグロ」)を研究。上に挙げたシューマン自身の言葉に反して加筆修正が多く書きこまれ、判読に苦労しましたが、当時のシューマンの考えや心境に触れる思いだったそうです。
グノーの「6つのメロディー」は自筆譜が見つからなかったものの、1839年に出版された初版楽譜を見つけることが出来たので、これを使用。リヒャルト・シュトラウスの「ホルン協奏曲第2番」は、オーケストレーション前のピアノ伴奏による自筆譜が存在したことが判明しており、自筆譜そのものは所在不明ながら、研究者や関係者の協力でそのコピーを見ることが出来ました。そこではピアノ・パートが3段、時に4段で書かれていたため、この録音では2台ピアノで演奏しています。最後に置かれたキルヒナーの作品は名ホルン奏者マリー=ルイーズ・ノイネッカーに捧げられた曲。ノイネッカーに師事したマルティネスは、この作品に込められた新しい響きや音色、演奏効果の追求を丹念に表現し、このアルバムを彼女に捧げています。共演は1992年からハンス・アイスラー音楽大学で伴奏者を務める小田井郁子。
※ブックレットにはアドリアン・ディアス・マルティネスによる解説の日本語訳が掲載されています。(ナクソス・ジャパン)

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