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『レコード芸術』2022年11月号 新譜月評 優秀録音/トリスタン

『レコード芸術』2022年11月号 新譜月評 優秀録音/トリスタン

トリスタン

歌い、嘆き、叫ぶ……孤高のピアニストが奏でる愛と死の歌

常にユニークな視点とテーマでアルバム作りに取り組んできたイゴール・レヴィットの最新作は(またしても)2枚組の大作。人生と存在に関する偉大な問いを探求し、有名なレパートリーから非常に珍しいレパートリーまでを網羅してきたイゴールの新作のテーマは「トリスタン」である。「トリスタン」といえばワーグナーの楽劇「トリスタンとイゾルデ」がまず思い出されるが、1857年から1859年にかけて作曲されたこの曲の前奏曲の冒頭で聴かれる精妙な和音進行は、その後の20世紀音楽への道を用意したと言われる。そしてこの曲に影響を受けて現代の作曲家ヘンツェが作ったのがピアノと電子音楽テープと管弦楽のための「トリスタン」。ヘンツェ作品はウェルザー=メスト指揮するゲヴァントハウス管との共演でこちらも注目されるだろう。
これらふたつの「トリスタン」を中心としつつ、マーラーの最後の(未完の)交響曲のアダージョ、そしてオープニングとエンディングにフランツ・リストの有名な「愛の夢」と「夕べの調べ」を持ってくるところもレヴィットらしい仕掛けと言えよう。日本盤のみ高品質Blu-specCD2仕様。(発売・販売元 提供資料)

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