MYUtakasaki

kk
『レコード芸術』2022年10月号 新譜月評 優秀録音/ラヴェル:ピアノ協奏曲と歌曲

『レコード芸術』2022年10月号 新譜月評 優秀録音/ラヴェル:ピアノ協奏曲と歌曲

ラヴェル:ピアノ協奏曲と歌曲
ロト&シエクルとティベルギアン夢の共演によるラヴェルの協奏曲が登場!
予想を上回る素晴らしさ!!ロトと手兵レ・シエクルはラヴェル作品とことさら相性が良く、次々と録音を実現していますが、ついにピアノ協奏曲に挑戦。それもティベルギアンを独奏に迎えているのが注目です。
ピアノは1892年製プレイエル・グランパトロンを使用。楽器はもちろん、楽譜にもこだわりを見せています。「左手のためのピアノ協奏曲」は第1次世界大戦で右手を失ったパウル・ヴィトゲンシュタインの委嘱で作曲されましたが、1932年1月5日にウィーンでの初演の際、能力的に無理のあったヴィトゲンシュタインが楽譜を許可なく変更し、スコアに意図的な付加をしたためラヴェルの怒りを買い、絶交状態となったと伝えられています。デュラン社より出版されたのはラヴェル死の年で、当時不治の神経疾患で校正など判断のできぬ状態でした。ヴィトゲンシュタインが初演時に自腹で浄書、印刷したスコアとパート譜は彼の独占権満了まで変更と付加のままオーケストラからオーケストラに貸し出されました。
それらの楽譜に加え、リュシアン・ガルバンによる校正と訂正の資料、1933年パリ初演時の1分50秒ほどの映像までも検証したクリティカル版を作成しているのも注目で、今後この作品の最重要盤になること間違いなしと申せましょう。
演奏も最上等。ティベルギアンの正確でニュアンスに富むピアノ、ラヴェルならではの透明で極彩色のオーケストラ・サウンドを楽しめます。リズム感も秀逸です。
人気作「なき王女のためのパヴァーヌ」も収録されていますが、オーケストラ版ではなくティベルギアン独奏のオリジナル・ピアノ版。味わい深い一幅の絵を観
るようなひとときを楽しめます。さらにステファーヌ・ドグーと歌曲を披露。最初期の「聖女」からラヴェル最後の作「ドゥルシネア姫に思いを寄せるドン・キホーテ」が収録されているのも大歓迎。さらに元祖ワールド・ミュージックの「2つのヘブライの歌」やラヴェルらしさ満載の「マラルメの3つの詩」も真似のできぬ美しさで聴かせてくれます。(キングインターナショナル)

« »